MOBILE HEROINES HYPER ALICE


―Prologue―
<プロローグ>



「行ってきま〜す!」

 そう言って、元気に自宅から少女は飛び出した。

 季節は春。天気予報によると今日はポカポカの天気で、桜前線は今週が真っ盛り。

「ルン、ルン、ル〜ン♪」

 そして、彼女の頭の陽気も春真っ盛りだった――。



 と、いっても決してアブナイ意味ではない。

 彼女の名は鏡国ありす。今日から花の中学1年生である。

 新しい制服に、ピカピカの学生カバン。

今日から始まる中学校生活に、彼女は期待しちゃいまくりだったのだ。

「今日からあっこがれの中学生です♪それに今日から通う学校には……エヘヘ〜♪」

 そこでなぜか、ありすはポッと赤くなる。

 ありすがルンルン気分なのは、今日が入学式だということだけではないようだ。

「あっ」

 どうやらありすの目の前に、もうひとつの理由が現れたらしい。

「あれは……あこがれの城井センパイッ!」

 道路をはさんだ向こう側を歩く人こそ、ありすを朝からやたらハイテンションにしている原因、今日から通う中学の2年の先輩、城井貴志だった。

 何を隠そう、ありすは目の前のこの先輩にあこがれて同じ中学校に入学したのである。

 そのあこがれの先輩がすぐそこを歩いている。

(ああ……今日から私はセンパイと同じ学校に通えるんだ。センパイはどんな部活に入ってるの?センパイと同じ部活に入っちゃったりして……)

 そんな妄想が頭を駆け巡る。

(そして手取り足取り教えてもらっちゃったりして〜、そして練習の後「鏡国さん、がんばってるね」なんてほめられちゃったりして……そして一緒に帰ることになって、駅前のカップルで有名なお店に入って、ふたりで特大のロイヤル・チョコレートパフェを食べるの)

 恋する乙女の妄想モード全開である。

 もし今ありすに『恋する乙女ゲージ』なんてものがついていたら、そのメーターは最高値を振りきりまくりであること受けあいである。
だだでさえ盛り上がっていた気分はもう最高潮に達した。

「センパ〜イッ」

 ありすは後先考えずに飛び出した。

 それがいけなかった。

 乙女の妄想全開のありすには、道路の反対から迫りくる車が見えていなかったのだ。

 突然飛び出してきた女の子の姿に、車の運転手は驚いてブレーキを踏む。

 しかし、車は急には止まれない。

「エッ?」

 すべては一瞬の出来事だった……。



 こうして鏡国ありすは死んだ……。

 てゆーか、物語のヒロインがいきなり死んでどうする?

 このままで終わっていいのか!?

 だが、そう思っているのは作者だけではなかったらしい。

 その男は一連の光景を、近くの電柱にへばりついて見ていた。

 そしてつけていた双眼鏡になっているらしいゴーグルをはずすと、メガネのその奥に決意の表情を浮かべた。




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